設計屋
     
     
   

2009年09月

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長期優良住宅?【その2】

 長く住み継がれるすまいとは、どのような家なのでしょうか。 住み継がれるための条件のひとつに、住まう人たちが「家」に対して愛着を抱いているかが挙げられると思います。

 現代の家はハウスメーカーの台頭によって「建てるもの」から「買うもの」に変わってきました。住宅展示場に行き、イメージと予算に合った家を選ぶ。営業マンと打合せを行い、間取りや材料などを決めてゆく。工事が始まり、早ければ3ヶ月足らずで引渡しとなります。どんな人たちが図面を描き、どんな人たちがつくっているのか、ほとんど知らないうちに家が完成します。
 また逆に、図面を描く人や、家を作る多くの職人さんたちも、どんな家族のために図面を描き、つくっているのか、顔さえ知らない場合もあります。

 これでは、住まう人もつくる人も、でき上がった家に愛着が湧くはずがありません。愛着がなければ丁寧に使うことも、自ら進んで手入れやメンテナンスをしたいとも思わないのではないでしょうか。どんな良い材料を使っても、手入れをしなければそれだけ耐用年数は短くなります。逆に手入れをすれば、そこそこの材料でも長持ちするのです。

 愛着を持ってすまいに接する。その為にはつくるプロセスに関わり、共に苦労したり楽しんだりすることで、自分たちの家・自分たちでつくり上げた家という意識が深くなります。昔はちょっとした家の修繕はお父さんの役目でした。剥げたペンキを塗り直したり、棚を作ったり、破けた障子紙を張り直したり。子供たちもそれを手伝い、目にすることで自然と家を大切にする心が育ちました。

 家の耐用年数を長くするためには、構造的に丈夫にすることや、間取りや設備の更新をしやすくすることももちろん必要ですが、最も必要なことは、住む人が愛着を持つ心を育てることだと思います。

投稿者 sekkei-ya :2009年09月17日17:29

S邸の中間検査を受けました。

 

特定行政庁と保険会社の検査員による中間検査(屋根の小屋組みと構造上主要な軸組工事の検査)を受けました。

まずは書類審査。構造概要を説明後、書類照合・工事写真・使用材料伝票のチェックなどを行いました。次いで現場審査。各部材寸法・仕様・位置、金物仕様・接合状況のチェックなどを行い、結果はもちろん合格。

10月以降引渡し物件から住宅瑕疵担保保証の保険加入などが義務付けられる関係から、現在制度移行期間となってしまったため、S邸に関しては特定行政庁と保険会社によるダブルチェックとなりましたが、今後は特定行政庁による中間検査は廃止される方向のようです。

投稿者 sekkei-ya :2009年09月17日10:22

長期優良住宅?【その1】

 今年6月4日に施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」。長く住み続けられる住宅には、税制・融資優遇をしますという法律です。先日、この法律に関する講習を受けました。

 日本における木造住宅の平均寿命を知っていますか? その答えは、何と27年数ヶ月だそうです。欧米諸国の木造住宅と比較すると1/3程度の年数しか使われずに建て替えられています。これでは住宅ローンの返済が終わるころには建て替え時期を迎えることになり、日本のお父さんたちは、常に住宅ローンに追われていることになります。

 どうして日本と欧米ではこんなに木造住宅の寿命が違うのでしょうか。それは不動産価値の評価の違いによるところが大きいと思われます。欧米諸国では古い家でも手入れを怠らず、丁寧に使っていれば、建てた時とほぼ同じ金額で売ることができるのに対し、日本では古くなるほど不動産価値が減ってゆき、まだ住宅ローンが残っているのに価値はそれ以下なんてこともザラです。

 では、日本の住宅はそれほど質が劣っているのでしょうか。 そんなことは全くありません。日本の木造建築の技術は大変優れており、日本各地に築後100年以上経過した住宅が、台風や地震などの過酷な条件にも拘わらず今も住み継がれています。そうした「古民家」の集落を訪れると不思議と心が落ち着きやさしい気持ちになります。長い間変わらずに親しまれた風景、我々日本人が持っているDNAにそうした原風景が刻まれているのかもしれません。<つづく>

投稿者 sekkei-ya :2009年09月14日19:18

S邸の屋根工事が始まりました。

  

屋根の仕上材を葺く工事が始まりました。

今回はカラーガルバリウム鋼板の縦ハゼ葺きです。デザインのアクセント及び日射による焼込みを緩和するため、南面は防汚染塗装を施した艶有りホワイト、北面は母屋への日照反射を防ぐために遮熱塗装を施した艶消しブラックとしました。

棟の部分には屋根裏の換気のため、通気棟を被せます。外壁の通気工法と連携して、構造部材を乾燥した状態に保ち、腐朽を防止します。

投稿者 sekkei-ya :2009年09月14日17:04

S邸の上棟式を行いました。

  


建方が無事終了し、上棟式を行いました。

上棟式は建前(たてまえ)とも呼ばれ、屋根の最も高い「棟(むね)」が無事上がったことを祝うと同時に神に感謝し、以降の工事の安全を祈る儀式です。
一般的には職人さんが主となる儀式ですので、住宅の場合神主さんは呼ばず、大工の棟梁が仕切って行います。また、ハウスメーカーなどの場合は省略してしまうことも多いと聞きます。

今回はクライアントのSさんも棟に上がり、棟の中央に立てられた「幣束(へいそく)」に向かい、上棟への感謝と安全祈願をお願いしました。

上棟の日付・工事名・クライアント名・施工社名を記した棟札が、ここに住む人々の生活を見守り、この建築の歴史を記す証(あかし)として、家の頂に祭られます。

投稿者 sekkei-ya :2009年09月06日11:13

S邸の建方工事を行いました。

S邸07建方.JPG

建方(たてかた)を行いました。天候にも恵まれ、暑いくらいの快晴でした。

プレカット工場にて加工した構造材をレッカー車にて荷揚げしながら、職人さん8名で予め敷込んであった土台の上に、柱から順を追って建てて行きました。

2階のボリュームが概ね上がった姿を目にしたクライアントのSさん「思ったより大きいですね。」
ローコストを実現するため設計打合せを重ねるごとにコンパクトになってきたプロセスからか、もっと小さいイメージをお持ちだったようです。
また、既存の母屋が比較の対象として並んでいるため、更地に建つ同規模の住宅と比べると大きく感じることや、敷地が道路から40cm上がっていること、外部足場などの影響もあるのでしょう。

実際、私も「意外と大きい」というのが率直な感想でした。
近隣と母屋への圧迫感を緩和するため、可能な限り建物高さを抑えた設計を行っているので、今後外装などの工事が進むにつれて、徐々にコンパクトなイメージへと変わってゆく予定です。

投稿者 sekkei-ya :2009年09月05日12:07