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ニュース&エッセイ<考察>

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長期優良住宅?【その2】

 長く住み継がれるすまいとは、どのような家なのでしょうか。 住み継がれるための条件のひとつに、住まう人たちが「家」に対して愛着を抱いているかが挙げられると思います。

 現代の家はハウスメーカーの台頭によって「建てるもの」から「買うもの」に変わってきました。住宅展示場に行き、イメージと予算に合った家を選ぶ。営業マンと打合せを行い、間取りや材料などを決めてゆく。工事が始まり、早ければ3ヶ月足らずで引渡しとなります。どんな人たちが図面を描き、どんな人たちがつくっているのか、ほとんど知らないうちに家が完成します。
 また逆に、図面を描く人や、家を作る多くの職人さんたちも、どんな家族のために図面を描き、つくっているのか、顔さえ知らない場合もあります。

 これでは、住まう人もつくる人も、でき上がった家に愛着が湧くはずがありません。愛着がなければ丁寧に使うことも、自ら進んで手入れやメンテナンスをしたいとも思わないのではないでしょうか。どんな良い材料を使っても、手入れをしなければそれだけ耐用年数は短くなります。逆に手入れをすれば、そこそこの材料でも長持ちするのです。

 愛着を持ってすまいに接する。その為にはつくるプロセスに関わり、共に苦労したり楽しんだりすることで、自分たちの家・自分たちでつくり上げた家という意識が深くなります。昔はちょっとした家の修繕はお父さんの役目でした。剥げたペンキを塗り直したり、棚を作ったり、破けた障子紙を張り直したり。子供たちもそれを手伝い、目にすることで自然と家を大切にする心が育ちました。

 家の耐用年数を長くするためには、構造的に丈夫にすることや、間取りや設備の更新をしやすくすることももちろん必要ですが、最も必要なことは、住む人が愛着を持つ心を育てることだと思います。

投稿者 sekkei-ya :2009年09月17日17:29

長期優良住宅?【その1】

 今年6月4日に施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」。長く住み続けられる住宅には、税制・融資優遇をしますという法律です。先日、この法律に関する講習を受けました。

 日本における木造住宅の平均寿命を知っていますか? その答えは、何と27年数ヶ月だそうです。欧米諸国の木造住宅と比較すると1/3程度の年数しか使われずに建て替えられています。これでは住宅ローンの返済が終わるころには建て替え時期を迎えることになり、日本のお父さんたちは、常に住宅ローンに追われていることになります。

 どうして日本と欧米ではこんなに木造住宅の寿命が違うのでしょうか。それは不動産価値の評価の違いによるところが大きいと思われます。欧米諸国では古い家でも手入れを怠らず、丁寧に使っていれば、建てた時とほぼ同じ金額で売ることができるのに対し、日本では古くなるほど不動産価値が減ってゆき、まだ住宅ローンが残っているのに価値はそれ以下なんてこともザラです。

 では、日本の住宅はそれほど質が劣っているのでしょうか。 そんなことは全くありません。日本の木造建築の技術は大変優れており、日本各地に築後100年以上経過した住宅が、台風や地震などの過酷な条件にも拘わらず今も住み継がれています。そうした「古民家」の集落を訪れると不思議と心が落ち着きやさしい気持ちになります。長い間変わらずに親しまれた風景、我々日本人が持っているDNAにそうした原風景が刻まれているのかもしれません。<つづく>

投稿者 sekkei-ya :2009年09月14日19:18

仕事場の風景【設計屋の仕事2】

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われわれが建築を創るとき、それぞれのステップで、数多くのスタディを行います。
たとえば、基本となる建物配置を行う場合でも、一般的な北側配置を選択する前に様々なケースを試みてみます。それは、必ずしも一般解がすべてのケースにベストであるとは限らないからです。
常識にとらわれベストを見逃してしまうことは、とても危険なことです。
あらゆる可能性を求めて、われわれのスタディは日々続きます。

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投稿者 sekkei-ya :2007年01月18日00:15

建築を楽しむ【設計屋の仕事1】

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われわれは建築が楽しくて仕方ありません。
自由な発想で、新しい空間を創る。その行為に生きがいを感じています。
クライアントの方々と建設会社の方々と、その喜びを分かち合いたい。ひとつの建築に関わる多くの方々が、創る喜びをともに楽しみ、そして空間が出来上がってゆく。
そうして生まれた空間は、生き生きとした、楽しい空間になるはずです。

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投稿者 sekkei-ya :2007年01月17日00:09

子育てと建築【ろっくのすまい6】

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幼い頃の記憶は、大人になっても鮮明に憶えています。こうした原体験・原風景は、子供の成長に少なからず影響を及ぼすと思います。
例えば、幼い頃から子供部屋を与えると社会性が身に付かなかったり、逆に成長期に個室を与えないと自立心が育たなかったり。
何LDKという、家族分の個室+共用空間に自分たちの生活を合わせるのではなく、自分たちのライフスタイルを見つめなおし家族に合わせた空間でのびのびと子育てをしてみませんか。

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投稿者 sekkei-ya :2007年01月16日00:03

建築は女性と似ています。【ろっくのすまい5】

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一時、やまんばギャルというのが流行りました。派手なメイクにガングロ、素顔は以外にかわいい少女だったりしました。
こうした女性を好む方もいらっしゃるかもしれませんが少数派でしょう。むしろ、素顔を生かした薄化粧のほうが好感が持てるのではないでしょうか。
建築にも同じことが言えます。
柱や梁を全て隠して、サイディングやクロスなどの新建材で厚化粧をする。それよりも、古民家に見られるような構造美と、それに合った簡素な仕上げを施す。
手抜き工事や材質のごまかしも利きません。

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投稿者 sekkei-ya :2007年01月15日23:55

版画と絵画【ろっくのすまい4】

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住宅を建てるときにはいくつかの方法があります。その中で最も代表的なのがハウスメーカーです。標準設計を基本としているため、こうした家は単一的でオリジナリティに欠けます。
それに比べ、設計事務所が関わった家はひと目でそれとわかり、個性的なものが多いでしょう。
ハウスメーカーの家は版画で、設計事務所の家は絵画と言えるかもしれません。
自分たちのためだけのオリジナル。自分たちのライフスタイルにしっとりなじむ
妥協をしないの家を手にしてみませんか。

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投稿者 sekkei-ya :2007年01月14日23:42

建築は音楽と似ています。【ろっくのすまい3】

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バッハやモーツアルトなどのクラシック音楽。関わる人間は大別して作曲家・指揮者・演奏者・聴衆。
建築で考えると設計者・現場監督・職人・クライアント。
歌謡曲には作詞家・作曲家・編曲家がいますが、これらは意匠設計・構造設計・設備設計に該当します。
いずれにしても、美しいハーモニーを奏でるためには、これに関わるすべての人の実力と努力が必要となります。
それぞれの役割をそれぞれに誇りをもって全うする。そうすることで、人々を感動させる作品が生まれます。

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投稿者 sekkei-ya :2007年01月13日23:36

建築は料理と似ています。【ろっくのすまい2】

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素材の持ち味を生かして使う。素材のいろどりをコーディネートする。
木には木の持っているやさしさがあります。金属には金属の持っている鋭さがあります。土から生まれたタイルには土のぬくもりがあります。
それぞれの材料にはそれぞれの持ち味があり、その持ち味を生かし、組み合わせることでより一層、美しさがひきたちます。
大げさに味付けすることなく、素材の個性を生かし調理することで思いもよらないおいしさを発見します。

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投稿者 sekkei-ya :2007年01月12日23:30

建築は社会とつながっています。【ろっくのすまい1】

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建築はその大きさゆえに、持主の望むと望まざるとにかかわらず、自ずから景観を形成してゆきます。
流通や通信のシステムが確立されていなかった昔、建築は地域で育まれた材料によって、地域の気候風土に根ざした形式で建てられていました。日本の建築は、主に木と紙と土と石によって造られ、土壌によって素材の色や風合いが異なり、また、気候や地勢、生業による建物の形状が地域の個性となって街並みを形成していました。
しかし、現在では日本中どこに行っても似たような建材による個性に欠けた退屈な街並みが多く、楽しく街を散策する機会が減っているように感じます。

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投稿者 sekkei-ya :2007年01月10日22:47